平成21年10月8日
依田木工 依田健司
強度試験を終えて
8月24日、日差しの照りつける中
私たちは塩尻にある材木強度試場上へと車を走らせた
言い知れぬ不安と希望を胸に・・・
なんとなく結果は分かっていたのかもしれない。
今回試験場へ運んだ材木は
丸太を八寸に鋏んだいわゆる太鼓梁・・・
なんとも言えない曲線美を兼ね揃えた一品である
とてもじゃないが試験データーに使うような材料ではない・・・
その数6本
今回の強度試験に賭ける親方の心意気が
腹の奥底に深く染み渡る。
いつもなら構造材として、かつ化粧材として活躍すべきはずなのに・・・・・
世間では人工乾燥に対する信頼性が向上している中
我々が目指すもの・・・
地元の木を伐採し自然乾燥をかける
正直手間のかかることではあるが今消えつつある里山への愛
地元で育った木を使うことで湧き上がる愛着
言い始めればきりがない
なぜ全て規格化された外材がこんなにも横行し始めたのか
国や政府の言い分も分からないでもない
確かに構造計算の上で数字には出しやすい
人工乾燥により含水率の計測も確かなものだ
だが・・・・・・・・
木を無理やり人工乾燥させることにより木本来の粘りを殺してしまう
私たち大工からするとどうしても首を素直に縦に振ることができない
今回の試験結果も私たちが持ち込んだ材料は
強度的には問題ない。いや!申し分ない!!
荷重がかかる中、しなやかに耐え抜いた
とてもじゃないが人工乾燥の比ではない
同じ強度をもつ材料でも限界点を超えると一気に崩壊する人工乾燥材
限界点を超えても、しなやかに耐えうる自然乾燥材、私からすれば、自然と後者の方を建築材料として選択する。確かに、自然乾燥は狂いが生じやすい。木を適材適所に使うよう見極める力が職人として要求される。つまり、人工乾燥を使うことによって職人としての眼力はもちろん低下してしまう。今まさにこの時代、本物が生き残るべく要求されるもの、
それは、私たち若い大工にとって両手では抱えきれないほど大きいものである。
千日の修行を鍛とし、万日の修行を錬とする。
日々の鍛錬を腰を据えて行っていかなければならない。
国や政府の方針に自問自答しながら・・・あと、何年か後
自分の目指す大工というものがどのような位置にいるのか楽しみである。
最後に・・・
今もなお、強度試験という名目で使用された梁たちの心の声が
脳裏に焼きついている。
8月24日
この試験が私個人に与えた衝撃は計り知れない。